トピックス 第1回:株式上場の概要



株式公開とは、株主が同族あるいは特定少数の者に限られている株式会社が、一般から株主を募集する、あるいは株式を売り出すことにより、不特定多数の一般投資家に広く資本参加を求めることを意味します。株式公開を行なうことによって、企業は資金を広く調達できるようになるだけでなく、さまざまなメリットを享受することができます。しかし、株主に真の情報を恒常的に提示する義務も生じます。



■ 株式公開のメリット

■ 資金調達力の増大と財務内容の充実


株式市場から直接資金調達可能。また、時価発行増資などにより、比較的低コストで資金を集めることが可能になる。それによって、財務内容の充実化


■ 経営体質の強化


株式公開を行なうためには経営管理体制をしっかり固め、関係会社との取引などについても整備されていることが求められる。これが結果として企業を近代的な経営に導き、財務的にも組織的にも経営体質の強化


■ 社会的信用度・知名度の向上


株式公開は厳しい基準をクリアした証となるため、高い社会的信用度を得ることができる。また、公開後は毎日株価が報道され、決算の状況、役員情報など自社情報が新聞・雑誌などのマスコミに報道される機会が増えることから、知名度も向上


■ 従業員のモラール向上と優秀な人材の獲得


株式公開によって知名度が高まると同時に、「安定企業」「成長企業」として印象づけられるため、従業員のモラルの向上につながるとともに、採用も優秀な人材を多く集められる


■ 法人税課税適正化


同族会社が株式を公開する場合に、金融機関などの安定株主づくりを通じて持株比率を引き下げ、同族会社から非同族会社になれば、留保金課税など法人税課税における不利な扱いを受けることがなくなる


■ 資金調達


公募(IPO)により株主資本が拡充し、事業規模の拡大のための資金に充当できる。また、新事業への進出も容易となる。また、ふたたび公募(PO)するときも、容易に資金調達可能


■ 知名度向上


信用力の拡大による新規顧客の増加、販路の拡大・従業員の士気向上・優秀な人材の確保


■ コンプライアンスを意識した経営実現


コンプライアンス(法令遵守)確保が意識的に行われ、企業市民として健全な経営が確保される ストックオプションの行使・株式の市場売却により従業員等のモチベーション確保 ストックオプションの付与を通じて、株式公開前後でオーナーの目線と従業員の目線が同じになり、一体感も形成される


■ 従業員持株会を通じた従業員の士気向上・資産形成


従業員のやる気を引き出す


■ オーナーの創業者利益の確保


結果的に、創業当初のリスクを取ったことの対価としてボーナスを貰うことができる


■ 株式公開のデメリット

▲ ディスクロージャー義務


公開後は、投資家の保護や投資情報提供の観点から、決算発表、有価証券報告書、半期報告書など定期の情報開示(ディスクロージャー)のほか、株価に影響を及ぼす情報について正確・迅速・公平・均一に開示することが義務づけられるこれにともない、さまざまな書類作成のための事務作業量および経費、人的負担が増加する。


▲ 株式公開準備コスト


株式公開準備のためのコスト負担が何年も続く


▲ 上場維持費用の負担


新規上場後も、証券取引所・株主名簿管理人・監査法人等への支払が継続する


▲ 管理コストの増加


内部統制充実のための内部管理体制確保にコストがかかる


▲ オーナーの支配権の希薄化


資本政策の巧拙にも左右されるものの、オーナーの発言権は確実に低下する。株式公開後は事業承継がオーナーの思い通りにはならない


▲ 買収されるリスク


株式公開した結果、株式の売買が証券取引所を通じて自由になってしまう。その結果、競合相手や買収ファンドからTOBをかけられてしまう


▲ 株主総会対策


株式公開によって株主が飛躍的に増加するため、株主総会を大規模に開催しなければならず、事務作業量および経費が増加するほか、株主総会の運営などについて注意が必要


▲ 社会的責任の増加


株式公開をしていない会社に比べて、より重い社会的責任の遂行を求められる


■ 株式上場の基準

■ 形式基準と実質基準


株式公開は従来、ある程度の規模があって、安定した収益を確保している企業が行なうものとされていました。なので一定の基準を満たすことができずに公開を断念せざるを得ないケースも少なくありませんでした。 しかし近年、店頭(ジャスダック)市場が改革を推し進めてきたことや、マザーズ、ヘラクレスという新市場が相次いで創設されたことにより、潜在的成長力をもつ企業などにも株式上場への道が開かれました。よってこれまで以上に多くの企業に株式公開のチャンスが与えられています。 また、新興市場が整備され、証券市場全体が多様性を帯びるようになってきたことから、企業は、自社の目的や経営方針に応じて上場先を選定できるようになります。 なお、市場に株式を上場するための審査基準(上場基準)には、 ・資産や利益の額、株主数などについて一定の用件を定めた「形式基準」 ・経営管理体制など公開企業にふさわしい経営内容であることを多面的にチェックする 「実質基準」 があり、この双方を満たす必要があります。以下では形式基準、実質基準の順に、概要です。


■ 形式基準


(1)東証市場第一部・第二部の上場基準
通常は市場第二部に上場し、一定期間経過してから市場第一部に昇格する手順でいきます。しかし、基準の緩和により直接市場第一部に上場することも可能となりました。他の市場から東証市場第一部に直接上場し、市場関係者の関心を集める企業もあります。


イ)東証市場第二部の上場基準
上場株式数上場時4000単位以上
少数特定持株数
上場時80%以下かつ上場後期末75%以下 (上場株式数が6万単位以上10万単位未満の場合は 「上場株式数の87.5%−7500単位」の数以下。 上場時株式数が10万単位以上の場合は80%以下)
株主数 (1単位以上)
上場株式数が1万単位未満 ……… 800人以上
同1万単位以上2万単位未満………1000人以上
同2万単位以上3万単位未満………1200人以上
→以後1万単位増加するごとに100人加算 (上限2200人)
設立後経過年数直前事業年度末で3年以上上場時価総額20億円以上
株主資本の額直前事業年度末において連結で10億円以上利益の額
連結財務諸表の経常利益または税引前当期利益のいずれか低い額が、a・bいずれかに適合すること
a.最近2年間について最初の1年間は1億円以上、最近の1年間は4億円以上
b.最近3年間について最初の1年間は1億円以上、最近の1年間は4億円以上、かつ3年間合計で6億円以上
時価総額1000億円以上
連結財務諸表等最近2年間に「虚偽記載」がなく監査意見が原則として「適正」、最近1年間の監査意見が原則として「無限定」


ロ)東証市場第一部の上場基準(直接上場の場合)
項目基準内容
上場株式数10万単位以上 少数特定持株数
上場株式数が10万単位以上18万単位未満……… 「上場株式数の92.5%−2万2500単位」の数以下 同18万単位以上………80%以下
株主数 (1単位以上)
上場株式数が3万単位未満 ………2200人以上
同3万単位以上20万単位未満………2300人以上
→以後1万単位増加するごとに100人加算
同20万単位以上………4000人以上
→以後2万単位増加するごとに100人加算
設立後経過年数直前事業年度末で3年以上
上場時価総額500億円以上
株主資本の額直前事業年度末において連結で10億円以上利益の額 連結財務諸表の経常利益または税引前当期利益のいずれか低い額が、a・bいずれかに適合すること
a.最近2年間について最初の1年間は1億円以上、最近の1年間は4億円以上
b.最近3年間について最初の1年間は1億円以上、最近の1年間は4億円以上、
かつ3年間合計で6億円以上
時価総額1000億円以上
連結財務諸表等
最近2年間に「虚偽記載」がなく監査意見が原則として 「適正」、最近1年間の監査意見が原則として「無限定」


(2)店頭市場(ジャスダック)の上場基準
次に、店頭市場の上場基準を示します。
(対象企業)
主たる事業歴が1 0 年以下、または事業の企業化に要する費用(試験研究費等)の売上高に対する比率が3%以上
株主数 (1単位以上)
上場時1万単位未満......300人以上
同1万単位以上2万単位未満......400人以上
同2万単位以上......500人以上
利益の額
直前事業年度の当期利益が連結・単独ともに正純資産の額直前事業年度末において連結・単独ともに2億円以上事業の収益性、成長性、将来性等事業の今後の発展に寄与する特徴を有し、当該特徴、利益の額、純資産の額および時価総額を総合的に勘案して第1号基準が求める企業価値と同程度の水準が見込まれること
時価総額10億円以上
財務諸表等直前2事業年度の監査報告書が必要、かつ直前事業年度の監査意見が「適正」 (出所:ジャスダック 公表資料)


(3)マザーズの上場基準
マザーズは、上場対象になる事業で売上が計上されていれば、赤字企業であっても公開できます。売上以外の項目も全体的に店頭市場の第2号基準より低く設定されており、多くの企業に上場のチャンスが与えられています。
項目基準内容
上場株式数
上場に際して1000単位以上の公募または売り出し (うち最低500単位は公募)
株式の分布状況
a.少数特定者持株数の制約なし
b.新たな株主300人以上
c.上場時において時価総額10億円以上 設立後経過年数なし 株主資本の額なし 利益の額なし(ただし、上場対象として認められるようになった事業について売上が計上されていること)
財務諸表等
a.上場に係る公募・売出しに関する届出書において、「虚偽記載」なし、かつ監査意見が「適正」
b.監査意見が「無限定適正」であることは要しない


■ 実質基準


形式基準による審査は、上場を申請する最初の時点で行なわれます。受理されると実質基準による審査に進み、終了して株式上場が実現されます。
実質基準による審査では、おもに下記について時間をかけて質疑応答が行なわれます。
・申請企業が継続的に事業を営み、かつ経営成績の見通しが良好なものであるか
・事業を公正かつ忠実に遂行しているか
・企業内容の公開を適切に行なうことができるか
質疑応答は企業側から提出された文書をもとに行なわれます。その文書に記載すべき内容は市場によって多少違いがありますが、共通するおもな項目は次のとおりです。

●事業の内容
・会社の経営理念
・事業の具体的な内容および事業部門別の分析
・利益計画策定の妥当性
・工場および事業所の実査の状況

◆企業経営の健全性
・収益性の動向についての分析
・内部管理、牽制組織の整備運用状況
・人事および労務管理の状況
・資金収支、経理の状況

◆企業内容の適正な開示
・有価証券報告書の記載内容
・適時開示体制の整備状況

◆その他必要と認められる事項
・法律に違反する行為の有無
・裁判での係争事件の有無

株式上場について

株式上場の概要を簡単にまとめてみました。株式上場とは?株式上場をこれから目指そうと思っている方等、最初のさわりとしてご利用下さい。